【AI副業の罠】AI音楽・BGMチャンネルの収益化は激ムズ!

【AI副業の罠】AI音楽・BGMチャンネルの収益化は激ムズ!
(YouTube, AdSense, Play 公認エキスパート)
2024年06月06日 in YouTube

今回は「AI 副業で話題の BGM チャンネルの作成・動画投稿は YouTube で収益化ができるのか?」について、YouTube や AdSense のポリシーの観点から、そして私の実体験も踏まえながらお話していきます。

同じ内容を動画でもご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。

今回の内容を理解しないままチャンネル運営をしていくと、収益化ができなかったり、収益化が停止され、「こんなはずじゃなかった…。たくさんの時間と労力をかけたのに…。」と後悔する可能性があります。今回は少し厳し目の内容ですが、収益化の落とし穴に気付ける重要な内容なのでぜひ最後までご覧ください。

AI を使用した BGM 系チャンネルは収益化困難

まず結論を言ってしまうと、多くの AI 副業系のチャンネルで公開されているような BGM 系チャンネルの運営や動画投稿で収益化することは非常に難しいです。

lofi音楽チャンネルは収益化困難

「AIで簡単に作れる」「誰でも収益化できる」と謳われていますが、実際のところは「収益化ができなかった」「収益化が停止されてしまった」と相談を受けることが多くなってきています。

私自身は今までに4つの BGM 系チャンネルを運営してきて、現在も1つ収益化している BGM 系のチャンネルを所有していますが、正直簡単ではありません。

私のこのチャンネルをご覧になっている視聴者の方の中には AI 副業系チャンネルをご覧になっている方が多いようで、 YouTube Studio の「このチャンネルの視聴者が見ている他のチャンネル」にも AI 副業系チャンネルがいくつも表示されています。

特に相談が多いのが AI で音楽を作成する BGM 系チャンネルについてです。例えば「Lo-Fi」や「Chill」といったジャンルで、AI に楽曲を生成させて YouTube に投稿するチャンネルです。

楽曲生成ができる Suno AI で Lo-Fi などの BGM を作成し、画像生成 AI でこのような画像を作成したものと合わせて動画にして投稿するというものですね。他にも川のせせらぎや焚き火の音などの環境音を使った動画、ヒーリングミュージックの投稿などもあります。

suno ai と 画像生成AI

この手の成功事例としてよく挙げられているのが、Lo-Fi ジャンルで最大手の「Lofi Girl」です。Lofi ジャンルを YouTube で確立した元祖のチャンネルと言えます。

チャンネルの分析ができる「Social Blade」のデータを見せ、月間で何百万円、何千万円も稼げる魅力的なジャンルだと紹介されることが多いです。しかし、大手のチャンネルのデータばかり見せられても現実味がありません。

世界中にライバルチャンネルが激増している

実は何年も前から、BGM 系や環境音系のチャンネルは声と顔を出さず、誰にでもできる副業だと言われ続けています。最近は AI が登場したことで、より簡単に動画作成ができるようになりましたが、根本的なことは以前から変わっていません。海外でも日本でも昔から副業として運営が勧められているジャンルです。

そのため、ライバルチャンネルが世界中に存在することになります。特に最近は AI 副業系のチャンネルがこぞって紹介しているため、チャンネル数は以前よりも激増しています。

YouTube で「Lofi」と検索してみれば、たくさんのチャンネルや動画が表示されますが、これはほんの一部でしかありません。表示もされないような小さなチャンネルが数え切れないほどあります。

AI を活用することで、簡単に楽曲生成も画像生成もできるので動画投稿が効率的にできます。確かに素人であっても BGM 系の動画やチャンネルを作成できるので、そういう意味では再現性があります。

ただ、再生回数を上げ、チャンネル登録者を増やし収益化できるかは全く別問題です。動画を何十本、何百本と投稿しているのに全然再生されず、チャンネル登録者も少ない BGM 系チャンネルがたくさんあります。
収益化できるかは別問題

これをご覧になっている方の中にも「動画を投稿しても投稿しても全然再生されない」と困っている方も多いのではないでしょうか。単純に動画をたくさん投稿していても、ライバルが多すぎて関連動画やおすすめに表示してもらえないことも原因です。

他の BGM 系チャンネルと差別化する方法

また、どのチャンネルも同じような絵を使い、同じような BGM になっていることが多く、視聴者からしても「このチャンネルを観たい」と思ってもらえず、クリック率が低くなりがちです。

AI 副業系チャンネルが言っているような、楽曲と画像を生成して動画を投稿するだけでは再生回数は増えません。少なくとも、他のチャンネルと差別化できるような世界観が必要です。動画によって絵の雰囲気やテーマがバラバラで、統一感が全くないチャンネルも多いです。
差別化するために世界観が必要

例えば、チャンネルの動画やアイコン、チャンネルアートを見た時に、統一感や魅力的に感じる世界観が伝えられているでしょうか?動画単位できれいな画像を用意すれば良いわけではなく、チャンネル全体でターゲットとする視聴者に魅力的だと感じられるような世界観を伝えなければなりません。

またターゲットも明確に決めず、「Lofi」や「Chill」と言った大きなキーワードだけで投稿されている方も多いですね。チャンネル運営の経験が長い方であれば、このような選択をする方は少ないでしょうが、テーマやターゲットが広すぎると始めたばかりのチャンネルは大手のチャンネルに勝てません。

「Lofi」の中でも和風・ゲーム風、ファンタジー感など、テーマやターゲットをもっともっと絞っていかないと、その他大勢のチャンネルに埋もれてしまいます。
ターゲットの明確化

収益化の審査に通らない壁

もしチャンネルがうまく軌道に乗り、収益化基準のチャンネル登録者1,000人と過去1年間の総再生時間4,000時間をクリアしたとしても、収益化の審査に通らないという壁にぶつかります。最初にもお伝えしましたが、BGM 系チャンネルの収益化は非常に難しいです。

「いやいや、収益化できているチャンネルもたくさんあるじゃん。ちょっと大げさじゃないの?」と思われるかもしれません。確かにすべてのチャンネルが収益化できないわけではありません。収益化できているチャンネルもあります。しかし、一般的なチャンネルの収益化と比較すると難易度がとても高いです。

また、審査に承認され収益化できたとしても、後々収益化停止となるケースが多いです。このジャンルで収益化できているチャンネルを数年間確認してきていますが、収益化が停止してしまったチャンネルもいくつかあります。AI が登場する前からある、クリエイターが作曲している動画であっても停止しています。どれだけチャンネル登録者や視聴回数があっても関係なく停止します。

なぜ BGM 系チャンネルは収益化の難易度が高いのか

では、なぜ収益化の難易度が高いのかです。以前「収益化困難なジャンル10選」のページでも少し触れていますが、AdSense のポリシーにある「繰り返しの多いコンテンツ」や「再利用されたコンテンツ」を理由に承認されないケースが多いです。

繰り返しの多いコンテンツは、「コンテンツが類似していて、視聴者がチャンネル内の動画の違いを識別するのが難しい場合を指します。これには、テンプレートを使用して作成されたと思われる、動画間であまり違いがないコンテンツや、簡単に大量複製されるコンテンツが含まれます。」

再利用されたコンテンツは、「すでに YouTube や他のオンライン ソースに存在するコンテンツを再利用し、独自の解説、実質的な変更、教育やエンターテイメント上の価値が十分に付加されていないチャンネルを指します。」

「YouTube のチャンネル収益化ポリシー」のページに記載されていますので、ぜひ一度ご自身でも目を通してください。「繰り返しの多いコンテンツ」と「再利用されたコンテンツ」は内容が重なる部分も多く、チャンネルや動画に独自性が乏しかったり、クリエイティブに作成されていない動画に対して適用されることが多いです。

BGM 系のチャンネルであれば、「繰り返しの多いコンテンツ」「大量生産されたコンテンツ」「多数の動画で同じテンプレートを使用するコンテンツ」「重複するコンテンツ」あたりが該当する可能性があります。
BGM 系チャンネルがポリシー違反に該当する可能性がある部分

  • 数分から十分程度の音や映像を、何度も繰り返すことで数時間以上の動画にしていないでしょうか?
  • 自分で映像を撮影したり作曲したものを使うわけでなく、素材を多様していないでしょうか?
  • 画像や音源を差し替えるだけで、機械的に作成した動画ではないでしょうか?

「素材サイトを使わず AI を使って画像や音楽を作成しているから大丈夫だ」とお考えの方も多いですが、素材サイトの素材が AI 生成の素材に置き換わっただけなので、根本的な解決策になりません。

ちなみに、AI で生成した画像や音源の使用がダメなわけではありません。以前ご紹介した YouTube の AI 規制の内容と混同される方がいますが、別の話なのでご注意ください。

また、画像の上に動きのあるエフェクト(例えば光や雨、葉っぱを散らすなどの効果)を追加すれば収益化できると思っている方もいますが、それだけで収益化できるほど単純ではありません。

その副業系チャンネル、信じられる?

AI 副業系のチャンネルでは、これから YouTube を始めたい人が簡単に稼げると思わせ、情報商材やスクールへ誘導してお金を落としてもらうことに注力しているところも少なくありません。もちろん全てではなく、有益な商材やスクールもあります。

今回の話であれば、AI 副業を勧めている本人が、BGM 系チャンネルで収益化したことがあるのか聞いてみてください。また収益化できるようなサポート、収益化できなかった時までサポートしてもらえるのかも確認した上で、商材の購入やスクールへの参加を検討することをお勧めします。

今回お話してきた内容はいつもよりも厳しく、否定的なものだと感じたかもしれません。ただ、AI を使って YouTube のチャンネル運営に挑戦したいと思っている方の意欲を削ぎたいわけではありません。むしろ仲間が増えることを嬉しく思っています。

AI で効率的になったところは多いですが、それでも視聴者に満足してもらうためにどうしたらよいか悩み、試行錯誤しながらコンテンツを生み出していくことは大切だと思います。
試行錯誤しながらコンテンツを生み出す

流れ作業のようにコンテンツを量産しても収益化は難しく、視聴者も満足してくれません。チャンネル運営は大変なことが多いですが、一緒に切磋琢磨していきましょう。

執筆者情報
2004年から当サイト「iscle」を始めた管理者。Google 公認のプロダクトエキスパートとして、YouTube、Google AdSense、Play の公式コミュニティで活動中。スマホアプリ、Web ツールの使い方や最新情報を中心に発信しています。